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【校長日誌】卒業証書授与式を挙行しました

 春の訪れを感じる晴天のもと、本日、本校の卒業証書授与式を挙行いたしました。

 174名の卒業生の旅立ちを祝したいと思います。

  以下、校長式辞を載せます。

 

式辞

 春の息吹が感じられる今日この佳き日、第39回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより、私たち教職員及び在校生にとっても大きな喜びであります。

 保護者の皆様におかれましては、今日のお子様の成長された姿に感慨も一入のことと存じます。

 ご卒業をお喜び申し上げますとともに、これまで私どもが賜りましたご理解とご協力に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

 ただいま卒業証書を授与した174名の皆さん、ご卒業おめでとう。教職員一同、心より祝福いたします。

 さて、卒業生の皆さんが入学したのは令和2年4月。入学式は保護者参加も叶わず、翌日からは長期の臨時休校、次に登校できるのがいつになるのかさえ分からない状況で高校生活が始まりました。

 その後、臨時休校は解除されましたが、窮屈な高校生活を強いられたことは卒業生の皆さんが一番実感しているところだと思います。

 そのような3年間を過ごす中で、皆さんだけではなく私たち大人側も、知らず知らずのうちに「感染をさせない、たとえ感染しても広げてはいけない、だからこの行事は残念だが実施することはできない、あるいは縮小せざるを得ない」

 こういった考え方が、いろいろな取組に対して、一つの公式のようにできあがってしまっていたように感じます。

 そうして、ようやく今年度の後半あたりから、制限を緩和した形や通常形式での行事ができるようになってきました。まだまだこの先がどうなるかはわかりませんが、少なくともここ2,3年で行ってきた対応とは違う進め方に変化していくものと期待をしているところです。

 さきほども申し上げましたが、私たちはここ何年かの経験から「何かがあっては大変だ、であるならばその取組はやめておこう」という行動パターンがすっかりしみついてしまっているのではないか、そのため、「何か新しいことを始めよう」、あるいは「自分とは違う世界と接点を持ってみよう」、といった考えをそれぞれが自分の中に閉じ込めてしまっていたのではないかと強く感じています。

 そこで、その感覚を今こそ解除して、

 「何か新しいことをはじめてみよう、これまで身を置いたことのない分野に足を踏み入れてみよう」 このことを私から皆さんに今日は伝えたいのです。

 とはいっても、これまで押し込められていた感覚を元に戻すのはなかなか大変なことでしょう。また、どんな行動を起こせばいいのか思いつかないかもしれません。

 参考になることを期待し行動を起こすきっかけとして、私からSDGsについてお話をしたいと思います。

 2015年9月、国連でSDGsが採択されました。SDGsとは、17の項目からなる「持続可能な開発目標」のことであり、私たちが暮らしているこの地球を、将来にわたって持続させていくために掲げられたものです。ここにいる皆さんは、小学生や中学生の頃に、すでにこのSDGsという言葉に接してきていることと思います。中には、具体的に何か行動を起こしたことがある、そんな人もいるかもしれません。

 先日、ある企業の方が校長室を訪れてくれました。いくつか説明を受けた後、企業の方は私に向かって「SDGsの対応で」と言って資料をまとめたファイルを渡してくれました。何がSDGsなのだろうと考える必要はありませんでした。資料をまとめて収めるのはプラスチック製のクリアファイル、というのが今までの常識と言っていいほどであったのに、今回渡されたファイルは、形は全く同じでも紙製のものでした。

 SDGsの目標の12番目には「つくる責任 つかう責任」また、14番目には「海の豊かさを守ろう」というものがあります。プラスチックごみは海洋汚染などにつながると言われていることから、プラスチックを使わない紙製のファイルを企業の方は作成したのでしょう。こうすることで、つくる側の責任を果たし、海の豊かさを守っているのです。

 本校を巣立っていく皆さんに、なぜSDGsを紹介することにしたのか。それは、掲げられている項目が大変に多く、行動を起こしやすいと考えるからです。さきほど申し上げた「作る責任 つかう責任」、「海の豊かさを守ろう」といった項目は17設定されています、そして、それを細分化したターゲットは169もあります。これだけの数があるならば、自分にはできない、と感じることはないと思います。自分にできそうなこと、興味のあることから始めればいいのだと思います。

 学生生活を続ける人、社会人としての生活をスタートする人、それぞれ皆さんの歩んでいく方向は異なるわけですが、ただ目の前にあるやらねばならないことに関わるだけではなく、3年間制約を受けてきた鬱憤を新たに行動を起こすことで晴らしてもらいたいのです。

 話をSDGsに戻しますが、SDGsで掲げられている内容には、到達の期限が設けられています。期限は2030年です、それまでにそれぞれ掲げた目標を達成するため、世界中の人々が努力をしなければなりません。さきほど、SDGsが国連で採択されたのは2015年と言いました。そこから数えると、今は2023年ですので、折り返し地点あたりにあると言っていいでしょう。しかし、現在、目指すゴールに対して半分も達成しているとは考えにくいのです。このままでいけば、SDGsというのは2015年に描いた夢のお話ということで終わってしまうでしょう。

 私よりも、今後、数十年も長く地球と付き合うであろう皆さんには、2030年のゴール達成はかなわなくとも、ゴールに向けた行動を起こしてもらいたいのです。

 繰り返しますが、行動の内容や大きさは問いません。自分にできるところ、興味のあるところから始めてもらいたいのです。

私は、これまでの不自由な3年間を経験した皆さんだからこそ、その経験を生かした何かができる、そう信じています。感染防止の取組の中で行われた行事を遂行するためには、何よりも想像する力が必要でした。この活動で感染が心配されるところはどこにあるのか、感染防止対策としてこういったことができるのではないか、このように、皆さんは一つ一つの行動において想像力を働かせながら取組を成功させてきたはずです。

本校を旅立つ皆さんです。ぜひとも皆さんが蓄えている力を外部との接点において発揮してほしいのです。狭山清陵高校の3年間で培った成果を周りの人たちに知ってもらえるような行動を強く期待しています。

 結びに、本日ご出席を賜ることはかないませんでしたが、卒業生の成長を見守り厚いご支援をいただきましたPTA、後援会、同窓会のみなさま、また、地域をはじめとした関係者のみなさまに感謝を申し上げ、式辞といたします。

 

令和5年3月11日

                  埼玉県立狭山清陵高等学校長 田部井 洋

                                 (2,650字)

 

 これまでの人生よりもこれからの人生の方がはるかに長い卒業生の皆さん、

 それぞれの分野での活躍を応援しています。